リノベーションマンションは資産価値が下がらない?

「リノベーション」という言葉が世間に浸透し始めたのは数年前の認識ですが、意外にも日本のリノベーションは歴史があるのはご存じでしょうか。
日本では高度成長期時代以降、新築物件が世の中の一種のステイタスであり、価値のあるものだという認識が長く続いていましたが、1995年に住宅メーカーがリフォーム事業にシフトチェンジしたことによって、徐々にリノベーション文化が根付いてきました。
とはいえ、新築ブランドを求める購入者は一定数おり、新築ならではのメリットも非常に価値あるものだと考えるのはもっともです。
リノベーションが徐々に浸透していくと共に、昨今では空き家の増加に歯止めが効かず、国としても対応策を進めるようになりました。
既存住宅を「いいものをきちんと手入れし長く使えるもの」として社会全体で考えていくことが重要であり、国として整備を進めています。
このような背景もあり、リノベーション済みマンションを求める購入者も需要が増加しています。
では、ある程度築年数の経過しているリノベーション済みマンションの資産価値はどのように変化しているのでしょうか。
本記事では、リノベーションマンションの資産価値の変化について解説していきます。
目次
リノベーションマンションの資産価値は下がりにくい⁈
築20年の中古マンションに同じ間取りで同じ方角の部屋が2部屋空いていたとします。
このうち、1つの部屋をフルリノベーションし、設備を一新、間取りを使いやすくすると、需要を見込むことができる部屋はリノベーション済みの部屋になります。
上記の方式で考えると、リノベーション済みのマンションは、全く同条件の中古マンションよりも資産価値が下落しづらいと考えることができるのです。
リノベーションによって生まれる価値の変化とは?
新築マンションにリノベーション工事を入れることはほとんどありませんが、一般的に市場に出回っているリノベーションマンションの多くは中古マンションがベースになっています。
2章では、中古マンションにリノベーションすることで生まれる価値を3点紹介していきます。
- 室内設備が真新しい
- 築年数相場よりも高値を見込める
- 購入層の拡充
室内設備が真新しい
築年数が経過する程、室内環境の経年劣化が進みます。また、設備自体の流行りもあるため、どこか古さも感じることでしょう。
リノベーションマンションを購入する方の多くは、キッチンやバスルーム、洗面台などの水回りが新しい設備に変わっていることを望むのはずです。
やはり、設備の新しさは購入意欲を高めることにも繋がり、新築と同等クラスの設備が導入されていると一層評価が高いですよね。
築年数相場よりも高値を見込める
「先々売却するかもしれない」のであれば、やはり資産価値の下がりづらい物件探しをするものです。
1章で例を挙げましたが、リノベーションの範囲や、広く受け入れられる間取りなどに変えることで、相場よりも高値での価値を期待できるでしょう。
購入層の拡充
所謂、築古物件は立地などにも左右されますが、買い手がなかなか見つからないこともあります。
しかし、室内環境が様変わりしたリノベーションマンションになると、「リノベブランド」が価値を生み出し、購入層の数が底上げされます。
資産価値の高いリノベーションマンションの条件
2章ではリノベーションによって生じる価値について解説しました。
では、リノベーションマンションを購入する際、どのような箇所をポイントに見るべきなのでしょう。
3章では実際にリノベーションマンション探しをする際の見るべきポイントを詳しく述べていきます。
ポイント1:立地条件
最寄駅からの距離など、立地の良し悪しは資産価値に直結する条件の1つです。
主に都心部の乗降人数の多い駅ほど、駅徒歩10分圏内の駅近物件は希少価値の高い物件といわれています。
理由は、立地条件を第一条件とする購入層が多いため、物件の価値として下落しづらいとされています。
ポイント2:周辺環境
マンションの周辺施設がどれだけ整備されているかによって、価値の良し悪しも左右されます。
特に3LDKなどの家族向けの間取りになると、小学校、病院、習い事、スーパー、ドラッグストアなど物件を拠点に徒歩圏内で行けることが求められます。
そのほか、治安も含め、居酒屋などの繁華街が近くにないなど、家族が居住しやすい物件は資産価値の評価も安定します。
ポイント3:日当たりの良し悪し
室内の日当たりを重要視している購入者は非常に多いです。
特に南向きは絶対人気で、目の前に遮る建物が無ければ、1日陽の光を確保できるため人気が継続するでしょう。
南向きでありながら、建物が目の前にあるため日照の確保が難しかったり、東向きや北向きなどは、真冬でも室内温度が中々上がらない物件は、その分評価に差が出ます。
新築マンションでも日当たりの悪い階数や部屋は売れにくいこともある程、日当たりは重要なポイントになるのです。
ポイント4:マンション全体の管理状態
「マンションは管理を買え」という言葉をご存知ですか?
デザインや間取りももちろん重要ですが、細かな管理体制や、修繕計画が後々の資産価値に直結することもあるのです。
リノベーションマンションは中古マンションをベースとしているため、内見に行く際に管理状態をよくチェックするとよいでしょう。
次の7つの点を確認しておきましょう。
- マンション全体の清掃が行き届いているか
- 共有部分などの電灯が切れていないか
- ゴミ置場が清潔に保たれているか
- 共有部分の壊れている箇所が放置されていないか
- 集合ポストにチラシなどが溢れていないか
- 植え込みや植栽が綺麗に保たれているか
- 長期修繕計画が実施されているか
リノベーションマンションでも避けた方が良い条件
通常のマンションは、新築から築15年までの間で当初より70%の価格まで下がります。
その後、築20〜25年で当初の価格の40%台まで値下がりしつつも、下落カーブは一旦緩やかになり、築30年で下降が横ばいになります。
築30年で下落が横ばいになる理由の1つが、リフォームやリノベーションを施工した上で売却することが多いためとされています。
このような資産価値の下落も踏まえつつ、同じリノベーションマンションでも少し考えた方が良いとされる条件を4つに分けて紹介しましょう。
ポイント1:旧耐震基準のマンション
地震大国ともいわれている日本では、災害に強い建物を維持するため、耐震基準の内容を都度改正してきました。
大きな耐震基準の境界は1981年6月以前に建てられたか、1981年6月以降の建物かによって、基準となる耐震基準が異なります。
昨今の大きな地震でも崩壊することなく残った建物の多くが新耐震基準の建築物だったという実績もあることから、旧耐震基準を基にしているリノベーションマンションであれば、補強工事が入っているのかを確認することが必要でしょう。
ポイント2:サービスルームがある
間取り図を見ると「S」という表記の部屋がある物件を見たことはないでしょうか。
例えば、2LDK+Sや3LDK+Sなどと記載されている表記のことです。
部屋として利用できる空間ですが、「部屋」と表記ができない理由があるからこそSと記載されています。
まず「S」とはサービスルームのことになります。
多くは、採光や風通しの関係で部屋として認められていないため、サービスルームや収納として扱われています。
生活するには支障のない空間にはなりますが、資産価値という観点から見ると、部屋として表記できる空間の方が価値は高い傾向にあります。
ポイント3:全戸数が少ない
マンションを購入すると、毎月のランニングコストとして管理費と修繕積立金の支払いが必須になります。
管理費は、マンションを管理するために必要な経費として使われ、修繕積立金は大規模修繕や都度修繕が必要な場合、管理組合の承認を得て修繕積立金から支払われ、マンションの維持に使われます。
マンションの全戸数が多ければ、それだけ積立できる費用も多くなります。
次の2パターンで比べてみましょう。
マンション種別 | 管理費総合計 | 修繕積立金総合計 |
総戸数50戸のマンション 管理費1戸あたり15,000円 修繕積立金13,500円 | 750,000円/月 | 675,000円/月 |
総戸数200戸のマンション 管理費1戸あたり15,000円 修繕積立金13,500円 | 3,000,000円/月 | 2,700,000円/月 |
このように同じ費用を毎月かけていても総額では戸数によってかなりの差が生じます。
小規模マンションでも大規模マンションでも、定期的な修繕や大規模修繕をすることは同条件になります。
小規模マンションの場合、修繕費用が不足する可能性も後々出てくることもあり、追加徴収や全戸数修繕積立金の値上がりも考えられるのです。
管理報告書に管理費修繕積立金が足りているのか不足しているのか記載している場合もあるため、売主に確認するようにしましょう。
ポイント4:最寄駅からの距離が遠い
3−1でも触れているように立地条件は資産価値に直結します。逆をいえば、立地条件にプラス要素がなければ資産価値の評価も左右されるといえるでしょう。
しかし、駅から遠くても周辺にスーパーや子育て環境が整っている地域は、評価としてプラスに転ずることもあるため、周辺環境も踏まえた上で見極める力を養いましょう。
購入したリノベーションマンションの資産価値を維持するためには

リノベーションマンションを購入し、その価値を維持するためには、室内環境を整える必要もあります。
マンション全体としては大規模修繕などでマンション維持ができますが、リフォームやリノベーションはしないまでも、室内空間は購入者自身で管理しつづけなければいけません。
例えば、給湯器の寿命は10年程度といわれており、その寿命が経過すると不思議なことに給湯器が壊れることもあります。
壊れている状態で売却に出されるよりも新たな給湯器を整備した上で売却に出すのでは、購入者が受ける価値は全く異なります。
いずれ売却を視野に入れながら購入するのであれば、室内の維持管理を怠らないようにしましょう。
まとめ
リノベーションマンションを中古マンションと比較すると、物件によって価値は充分期待できます。
時代の流れも後押しし、今後もリノベーションマンションは普及してくるでしょう。
資産価値を下げないように、マンション全体の維持管理、さらに室内の維持管理、両方を定期的に行うことで価値ある物件として評価されるはずです。